東京地方裁判所 昭和43年(借チ)1019号 決定
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〔決定理由〕二、……本件の増改築は、格別近隣に悪影響を及ぼすものとも認められず、土地の通常の利用上相当なものと認められるので、本件申立はこれを認容すべきである。
三、そこで、次に附随の処分について検討する。
本件の増改築のうち、この点で問題となるのは、別紙(三)の(イ)記載の二階建の建物が新たに建てられる点である。同(ロ)及び(ハ)は極めて小規模なもので、附随処分に関し考慮に入れなくてよいと解される。
1 まず財産上の給付についてみるに、鑑定委員会の意見は二三〇万円を給付せしめるべきものとしている。そしてその根拠は前記建物の建築によつて借地期間の延長を来たし、かつ借地の十分の利用ができ、その効用が増加するという点に求められている。
すなわち、本件借地契約の残存期間は約一〇年であるが、新築される建物は少なくとも三〇年程度の耐用年数があると考えられるので、このような場合当然残存期間が三〇年となるよう、二〇年の期間延長をすべきものとし、これを前提とする算定方法をとるとともに、効用の増加としては、新たに建てられる建物が通常の世帯を収容できる程の規模であることを考慮して給付額を算定すべきものとする。しかして、まず(イ)期間が二〇年延長されることに伴い、いわゆる更新料に相当するものとして、敷地価格の五%の給付をなさしめるべきものとし、敷地価格は二、五二六万円(平方米当り四万八〇〇〇円)と評価されるので右の金額は一二六万三〇〇〇円となる。(ロ)次に効用の増加については、既存建物の床面積(130.44平方米)と、これに新築建物の床面積(一、二階の合計107.43平方米)を加えたもの(130.44平方米+107.43平方米)との比率に従い加算を行ない二三〇万円をもつて本件における給付額とする。
(2)(イ) ところで、実況見分の結果その他取調べた資料によると、本件借地上に現存する建物は昭和一四年頃に建築されたものであるが、極めて良質の材料が用いられており、適当の管理・保存が続けられる一〇年程度の時日の経過では容易に朽廃に至るものとは考えられない。また約一〇年後の期間満了時に更新拒絶によつて借地権が消滅すると考えられるような事情も認められない。それ故、本件増築がなくても、一〇年後もしくはこれを若干経過した程度の期間内に借地権が消滅すべきものとは考え難い。ただ、新たな建築の材質は明らかでないが、やはり現存建物よりも命数の長かるべきことは当然に考えられるので、この点相手方に不利益を与えることは否定できないであろう。
(ロ) 次に、前記効用の増加という点について考えるに、本件借地の面積は広く、現存建物は極めて余裕をもつて建てられており、これに増改築制限の約定の存することによつて、現在の一般の宅地の利用状況から見て必要以上に制約を加えられている状況にあるものと考えられ、本件の居住用建物の増築によつて宅地の合理的な利用を果たせるようになるわけであるが、これによる申立人の利益を、前記意見に見られるようにそのまま財産上の給付に反映させるのは適当でないと考えられる(むしろ、このように土地の利用を制限しつつ、そのような制限のない場合と同様の賃料を支払わせているとすれば、その方が合理的でないといえよう)。それ故、当裁判所は、本件において、この効用の増加という点については、後述の賃料の増額について考慮するほか、給付額の加算に関しては重きを置くべきでないと考える。
(ハ) 当裁判所は、以上の点において鑑定委員会の意見と所見を異にする点があるが、後述の約一〇年の期間の延長の点をも合わせ考え、賃貸人がその意に反して借地期間が延長されることによつて受けると考えられる経済上の不利益を填補する意味で財産上の給付を命すべきものと考える。ただ上述の点を的確に給付額に反映させ得る算式はないが鑑定委員会の意見を参酌して本件土地の更地価格及び借地権価格をそれぞれ二、五二六万円及び一、七六八万二〇〇〇円と算定し、借地権価格の約四%(更地価格の約2.8%)に当る七〇万円をもつて給付額と定めることとする。
3 賃貸借の期間については、本件許可に基づき新たな建物が建築されるのであるから、建築後約二〇年程度の期間があるよう約一〇年あまりの延長をするのが相当と考え、昭和六三年一二月三一日までに延長することとする。
4 賃料については、鑑定委員会の意見のとおり一カ月七、五〇〇円に増額することとする。(安岡満彦)
(一) 借地
東京都世田谷区駒沢三丁目
宅地526.24平方米
(二) 現存建物
(家屋番号一二五番六)
木造瓦葺平家居宅 一棟
床面積130.44平方米(39.46坪)
(三) 増改築の内容
(イ) 右建物の東側に
木造二階建居宅 一棟
床面積一、二階とも各53.71平方米(16.25坪)を増築する。
(ロ) 現存建物の南側巾三尺の廊下を巾一間に拡張する。
(ハ) 右建物の北西部、台所、食堂、浴室便所等の存する部分の屋根を改修する。